「SNS運用をはじめて任されたけど、何からはじめたらいいのかわからない」
「オピニオンリーダーって聞いたことはあるけど、実は理解できていない」
この記事では、マーケティング分野でよく耳にする「オピニオンリーダー」について解説していきます。
企業のマーケティングをするうえで絶対に知っておいてほしいオピニオンリーダーですが、その意味合いは意外と深く理解されていません。
はじめて知る人でもわかりやすいように、オピニオンリーダーの意味や、役割についても説明します。
ほかにも、オピニオンリーダーを活用することで得られるメリットや、活用事例も紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
オピニオンリーダーとは?
オピニオンリーダーとは、集団で意見を決めるときに、決断に対して強い影響力をもつ存在のことをいいますが、マーケティング分野では消費者行動に対して強い影響力をもつ存在といわれています。
オピニオンリーダーは特別に社会的な地位が高いわけではなく、消費者と同じ立場であることが大きな特徴です。
同じ目線で情報を発信するので、「この人が良いと言っているなら使ってみたい」、「あの人の意見なら間違いない」と思わせてしまうような、周りの人や消費者の心を動かす力をもっています。
流行に敏感で知識も豊富なオピニオンリーダーがトレンドを発信することで、不特定多数の消費者の認知度をあげ、購買意思をも左右するので、オピニオンリーダーを活用したマーケティングを採用する企業が増えています。
オピニオンリーダーの意味(語源)
オピニオンリーダーは、1960年代にアメリカの社会学者エベレット・M・ロジャーズ氏とD.カッツ氏が作ったといわれている言葉で、英語のopinion(オピニオン)とleader(リーダー)を組み合わせた単語です。
日本では英語の「opinion leader」をカタカナにしたオピニオンリーダーという表現 で使われています。
意味としては、「opinion」が意見、「leader」が指導者という意味になるので、直訳すると「意見の指導者」という意味です。
現代でも、個人ユーザーの口コミや意見が強い影響を持つように、当時から家族や友人などの近しい人からの意見の方が影響力が強いと考えられてきました。
日本語では世論形成者や世論先導者といわれており、広い範囲で他人の意見に影響を与える人もいれば、特定のコミュニティーの中でだけ影響を与えるオピニオンリーダーもいます。
インフルエンサーとの違い
インフルエンサーは、広い意味ではオピニオンリーダーと同じく「影響力のある存在」です。
インフルエンサーとオピニオンリーダーの違いがわかりずらいと感じている人が多いです。それぞれのポイントは、影響力のある存在の対象が個人ユーザーのみなのかどうかです。
オピニオンリーダー | 個人ユーザー + 口コミなど |
インフルエンサー | 個人ユーザーのみ |
インフルエンサーもオピニオンリーダーの一部ですが、その対象が個人のみに特定されています。
SNSでライフスタイルを発信している人気の個人ユーザーが商品を紹介することで、ほかの個人ユーザーは「この人と同じものを使ってみたい」、「この人が紹介しているものが流行の最先端」という心理になり、消費行動につながります。
一方で、オピニオンリーダーは個人ユーザーだけではなく、口コミも対象です。
人気のある飲食店を探したり、評判のコスメを探すとき、ほとんどの消費者がインターネットやSNSで口コミやレビューを参考にします。
匿名の口コミ投稿ですら消費行動に大きな影響を与えることを考えると、口コミは現代特有のオピニオンリーダーといえるでしょう。
オピニオンリーダーをマーケティングに活用するメリット
最近では、マーケティングにオピニオンリーダーを採用する企業が増えていますが、オピニオンリーダーを活用することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、企業がオピニオンリーダーを活用する3つのメリットについて解説していきます。
はじめてオピニオンリーダーの導入を考えている場合は、自社に合っているメリットなのかどうか参考にしてみてください。
- コストが抑えられる
- 内容の濃い宣伝が広まる
- ブランディング
メリット①コストが抑えられる
1つめのメリットは、「コストが抑えられる」です。
マーケティングにかかるコストを抑えることは企業でも重要な課題ですが、オピニオンリーダーを活用することでコストを抑えることができます。
オピニオンリーダーという言葉を考えたアメリカの社会学者が説いた「イノベーター理論」という考え方では、新しい製品、サービスの市場への普及過程を5つのグループに分けて分析しています。
その中でオピニオンリーダーと呼ばれているのはアーリーアダプター(初期採用者)という層です。
アーリーアダプターとは、トレンドに敏感でいち早く商品を購入するような発信力のある消費者のことを言います。アーリーアダプターに商品やキャンペーンを知ってもらうことができれば、企業が大きなプロモーションをしなくても情報は広まってくれます。
5つのグループを表にすると以下のとおりです。
イノベーター(革新者) | 情報感度が高くヒットするような新しいものをいち早く採用する人 |
アーリーアダプター(初期採用者) | トレンドに敏感で早い段階で採用し、情報を発信する力を持っている人 |
アーリーマジョリティー(前期追随者) | 新しい製品やサービスには慎重かつ冷静な目で見ているが、アーリーアダプターの影響を大きく受ける人 |
アーリーマジョリティー(前期追随者) | 新しい製品やサービスに消極的だが、ほかのユーザーの口コミに大きく影響を受けやすい |
ラガード(遅滞者) | 新しい製品やサービスが市場で当たり前の存在にならないと採用しない保守的な人 |
このように、新しい製品、サービスの市場への普及過程を5つのグループに分けて分析することで、グループ毎のマーケティング戦略を考えることができます。
オピニオンリーダーであるアーリーアダプターに商品を使ってもらうまではコストがかかってしまいますが、その後はアーリーマジョリティー、レイトマジョリティーへと自然と拡散されていくので、あえてコストをかけてプロモーションしなくても済むのです。
メリット②内容の濃い宣伝が広まる
2つめのメリットは、「内容の濃い宣伝が広まる」です。
商品を購入したり飲食店を探すとき、気になるのが口コミです。消費者は企業のホームページを見るよりも、口コミサイトをまずは参考にします。
口コミには、商品であれば使い方や成分、機能のことを書いているユーザーがいます。飲食店の口コミであれば、店内の雰囲気やメニュー、価格帯のことを詳しく書いているユーザーがいます。
口コミもオピニオンリーダーのひとつですが、口コミサイトや個人ユーザーをオピニオンリーダーとして活用することで、同じ消費者という第三者目線で意見を聞くことができるので、ほかのユーザーに信用されやすいのです。
企業がコストをかけてプロモーションをしなくても、オピニオンリーダーが内容の濃い宣伝をしてくれるのは、活用するうえで嬉しいポイントです。
メリット③ブランディング
3つめのメリットは「ブランディング」です。
ブランディングとは、「〇〇といえばあの商品」「このマークといえばあの企業」というように、ユーザーに共通イメージを浸透させることで、企業の信用性に大きく関わるものです。
企業が一方的にプロモーションをし続けるよりも、同じ消費者立場であるオピニオンリーダーの意見のほうがイメージが浸透しやすく、製品や企業に対する信用性も高くなります。
オピニオンリーダーに情報を拡散してもらったり、消費行動を促進してもらうことで、自然と企業の認知度を上げるのに効果的です。
オピニオンリーダーからほかのユーザーへ情報がさらに拡散することで口コミも増えるので、新しい製品やサービスに対して慎重派の消費者も興味関心が高くなり、結果的に企業の「信頼」というブランディングにもつながっていきます。
オピニオンリーダーを活用した成功事例
ここからは、実際にオピニオンリーダーを導入している企業の活用事例を紹介していきます。
自社でオピニオンリーダーを活用するイメージをふくらませながら、どんな活用方法が合っているのか参考にしてみてください。
事例①オリオンビール
オリオンビールはテレビコマーシャルに歌手で人気のあるGACKTさんを起用しています。
オリオンビールは沖縄県の企業で、沖縄県出身でもありメディアでも人気のあるGACKTさんをオピニオンリーダーとしてテレビコマーシャルに採用することで、県内の消費者の地元愛を刺激し、商品のプロモーションにつなげました。
芸能人だと一般的な消費者目線とは少し違うイメージはありますが、思い切って芸能人を活用し、テレビコマーシャルだけではなく、YouTubeやInstagramでも宣伝をすることで全国の人に興味関心をもってもらおうという狙いがあります。
GACKTさんのファンがSNSでこのテレビコマーシャルを広めることで、大掛かりな宣伝をしなくても、全国の人にオリオンビールという商品を宣伝することができ、「美食家でもある、この人が宣伝しているなら飲んでみよう」という消費者心理につながります。
事例②Album
Albumという美容室では、美容師さん個人でInstagramのアカウントを作り、トレンドのヘアスタイルや商材を紹介しています。
美容師さん個人のライフスタイルやファッションなども投稿することで、美容師さん自体にファンがつき、美容室全体の信用度がアップするという効果があります。
実際に予約をとることで、一般人の美容師さんであるにも関わらず、有名人に会うかのようなワクワク感もあります。
AlbumはInstagramだけではなく、ホットペッパービューティーという口コミサイトも活用していて、SNSで認知度を上げ、たくさんの口コミでさらに消費者の信用を獲得している例です。
事例③タニタ
https://twitter.com/SEGA_OFFICIAL/status/1319486977759047681
株式会社タニタの公式アカウントでは、商品の紹介やキャンペーンのプロモーションだけではなく、「本当に企業のSNS?」と疑ってしまうほどおもしろい投稿が多く、Twitterユーザーから人気があります。
タニタというと健康機器を扱っている企業で、社員食堂なども有名ですが、若い年齢層ではあまり興味関心がない人も多いでしょう。
しかし、こちらの投稿のように、他社であるセガの公式アカウントとの絡みをいれてフォロワーを飽きさせないことで、幅広い年齢層から指示を集め、結果的に企業の認知度をあげています。
このように個人ユーザーではなく企業の公式アカウントであっても、運用している人、つまり「中の人は一体どんな人なんだろう」とワクワクさせることで認知度があがったりファンが増えます。
普段から堅苦しい投稿ばかりをするよりも、ほかのユーザーが気軽にコミュニケーションをとりやすい投稿を挟むことによって、宣伝に対して興味を持ってもらいやすくなります。
また、中の人がオピニオンリーダーになることで、タニタの商品についてはプロなので、商品の紹介などを投稿したときに信頼度が高まるメリットもあります。
事例④ニトリ
https://twitter.com/NitoriOfficial/status/1320642423861571585
オピニオンリーダーの対象になる口コミをSNS上でうまく活用しているのが、ニトリです。
「#ニトリで見つけた」という特定のハッシュタグを指定してツイートを広めることで、消費者にニトリで購入した商品の使い心地や写真を投稿してもらい、口コミを集めています。
実際に同じ立場の消費者が口コミや写真を投稿していることで、商品に対しての理解度が深まり、信用してもらいやすくなります。
購入を検討していた消費者は「良い口コミがあるから安心」という気持ちになり、購買意欲がアップするというメリットがあります。
事例⑤オヤツハンター!ドアふみ
【食べたぜ】セブンから、またしてもピエール・エルメさんとのコラボ商品が発売されてるぜ!今回は「マロンショコラ」のカップケーキ。ふわふわで甘いマロンホイップクリームに、ビターなチョコクリームがベストマッチングだぜ。間に挟まってるクッキーも、バター感があってうまいんだ。#オヤツハント pic.twitter.com/v43CmKqJbl
— オヤツハンター!ドアふみ (@doorfumi2018) October 24, 2020
最後に紹介するのは「オヤツハンター!ドアふみ」さんというTwitterアカウントで、とにかくコンビニスイーツやお菓子を食べては感想を投稿しています。
このように実際はどんな人が運営しているのかわからないアカウントでも、ある特定の分野について知識があったり、追及していると「この人が美味しいっていうなら食べてみたい」という消費者行動につながります。
セブンイレブンも企業の公式アカウントでリツイートすることで、口コミをオピニオンリーダーとして活用しています。
まとめ
今回はオピニオンリーダーの役割や、企業でオピニオンリーダーを導入するメリット、意外と知られていないインフルエンサーとの違いについて解説しました。
広告費用をあまりかけたくない企業、より多くの人にプロモーションをしたい企業にとって、情報を拡散する力があるオピニオンリーダーはとても注目されています。
自社の商品やサービスがどんな年齢層、どんな職業の人に人気があるのかなどリサーチをしたうえで、どんなオピニオンリーダーを採用するのか考えてみるのがおすすめです。
活用例で紹介したように、運用担当者がオピニオンリーダーになるという方法もありますので、幅広い選択肢でマーケティングを充実させましょう。